石狩市 浜益地区 千代志別　2019年10月 　　旧教職員住宅の横に建つ、千代志別神社。 　　鳥居が破損しており、周囲も草藪に覆われ始めていた。 　　千代志別集落に住む人々は、もはや１桁。 　　ご神体の維持にまで、手が回らないのだろう。 　　たまたまやって来た部外者の私が、どうこう言う資格はない。 　　かつて鰊漁が盛んだった頃は、それはそれは盛大な祭りが行われたという。 　　戦争が終わった昭和２０年代、浜益村、なかんずく千代志別は、最盛期を迎える。 　　春先のシーズンともなると、この集落の人口は一時的とはいえ軽く５００人を超えたらしい。 　　その中には、戦前からの旧知はもちろん、この時だけ顔を合わせる同じ郷里出身の者も大勢いた。 　　懐かしさの中にも欠けてしまったいつもの面子、押し寄せてくる捌ききれないほどの魚の群れ、活気どころか怒鳴り合い、殺気ずく浜辺。 　　空には一面にカモメが飛び交い、戦場と化した海の方角からは景気の良い声が、時には悲鳴までもが聞こえて聞くる、賑やかな風景。 　　ニシンだった。すべてはニシンだった。 　　ニシンとともに、人もカモメも消え去った。 　　この地は、人々が鰊に明日を託した、夢の跡地なのだ。 　　夢が覚めたのはいつだったのだろう。 　　神社は今、人々の夢がどうなったのかを、我々にこうして伝えている。 　　 　　石狩市のトップに戻る